統合失調症と仕事のヒント~症状との向き合い方から就労支援まで~

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統合失調症を抱えて仕事をしていくのに、不安を感じている方も少なくないのではないでしょうか?周囲の理解や自分の症状とどう向き合えばいいのか、将来への不安を抱えている方もいるかもしれません。

この記事では、統合失調症と仕事の両立、症状への理解から具体的な就労支援まで、わかりやすく解説します。 

さっそく詳しく見ていきましょう。

統合失調症における主な3つの症状

統合失調症は「思考」「感情」「行動」などに深刻な障害を引き起こす精神疾患です。

日本では約170人に1人が生涯のうちに統合失調症を発症するというデータがあります。(参照:「Burden of schizophrenia among Japanese patients: a cross-sectional National Health and Wellness Survey」BMC Psychiatry

この章では、統合失調症における主な3つの症状を理解し病気への正しい知識を深め、自分自身や大切な人の症状と向き合うための第一歩を踏み出せるよう解説します。

陽性症状|本来ないはずの症状が現れる

陽性症状とは健康な人には見られない症状が新たに現れることを指します。

主な症状と特徴

症状特徴
妄想・現実とは異なる信念を固く信じ込む状態
・周囲からの指摘や説得にも耳を貸さない
・「誰かに監視されている」「テレビが自分に話しかけている」などの内容が典型的
幻聴・実際には音源がないのに声が聞こえる現象
・指示や批判、命令する声を聞くケースが多い
・複数の声が会話していると感じることもある
思考の混乱・考えがまとまらず、話の筋道が通らなくなる
・突然話題が変わったり、関係のない話をつなげたりする
・現実感が失われ、混乱した状態になる

陰性症状|本来あるはずの機能が低下する

陰性症状とは通常の機能や能力が減少したり失われたりすることを指します。

主な症状と特徴

症状特徴
意欲の低下・日常生活の基本的な活動(入浴、着替え、食事など)が困難になる
・仕事や学習への取り組みが著しく低下する
・強い無気力感に支配される
感情の平坦化・喜びや悲しみの感情表現が乏しくなる
・表情の変化が少なくなる
・他者との感情的なつながりを感じにくくなる
社会性の低下・対人関係を築いたり維持が困難になる
・人との接触を避けるようになる
・社会的な場面での適切な行動が取れなくなる

認知症状|思考や記憶の機能に問題が生じる

認知症状は思考、記憶、注意などの認知機能の障害を指します。日常生活に大きな影響を与える症状群です。

主な症状と特徴

症状特徴
注意力の低下・集中力が持続しない
・周囲の状況を適切に把握できない
・複数のことを同時に処理するのが困難
記憶障害・新しい情報を覚えることが困難
・過去の出来事を思い出すことができない
・学習能力の低下
実行機能障害・計画を立てて実行することが困難
・問題解決能力の低下
・複数の作業を同時に行うことができない

症状の現れ方の個人差

統合失調症の症状は、患者一人ひとりによって現れ方が大きく異なることが医学的に知られています。これは脳の機能や構造、遺伝的要因、環境要因などが複雑に関与しているためと考えられています。

実際の臨床現場では次のような多様性が観察されます。

  • すべての症状が同時に現れるわけではなく、陽性症状のみが目立つ場合や陰性症状が主体となる場合など、症状の組み合わせは千差万別
  • 症状の程度や組み合わせは個人差が極めて大きく、軽微な症状から日常生活に深刻な支障をきたすレベルまで幅広いスペクトラムを示す
  • 病気の経過とともに症状が変化することも多く、急性期には陽性症状が強く現れ慢性期には陰性症状や認知症状が前面に出てくるパターンが一般的
  • 治療への反応性も個人によって大きく異なり、同じ薬物治療でも効果の現れ方に差が生じる

そのため画一的な治療ではなく、個々の症状パターンに応じた個別化された治療アプローチが重要となります。

統合失調症の診断と治療

早期発見・早期治療が、統合失調症の予後を大きく左右します。 この章では、統合失調症の診断プロセスと効果的な治療法を解説します。

早期の専門医への相談が、スムーズな社会復帰への第一歩となります。

統合失調症の診断プロセスを知る

統合失調症の診断は、精神科医による丁寧な問診と診察が中心となります。

問診では症状の内容や経過、生活歴などを詳しく伺い精神状態を評価します。
診察では精神状態や思考パターン、行動などを観察し神経学的検査や身体的な検査を行う場合もあります。

血液検査や脳画像検査(MRIやCTなど)は、他の病気との鑑別診断や、身体的な問題の有無を確認するために実施されます。診断基準としては、DSM-5(アメリカ精神医学会診断統計マニュアル第5版)やICD-11(国際疾病分類第11版)が用いられます。

これらの基準に基づき複数の症状が一定期間以上継続している場合に、統合失調症と診断されます。誤診を防ぐためには複数の医療機関で意見を聴取したり、専門医のセカンドオピニオンを求めることも有効です。

早期発見・早期治療は症状の悪化を防ぎ、社会復帰をスムーズにするうえで重要です。

効果的な治療法を理解する

統合失調症の治療には薬物療法と精神療法が中心となります。 

薬物療法では主に抗精神病薬が使用されます。抗精神病薬には第一世代抗精神病薬と第二世代抗精神病薬があり、それぞれ作用機序や副作用が異なります。
医師とよく相談し自分に合った薬を選び、適切な服用の継続が大切です。

精神療法では認知行動療法などが用いられます。
認知行動療法は間違った考え方を修正し、より現実的な考え方や対処法を身につけることを目指します。

さらに入院治療やデイケア、リハビリテーションなどの社会復帰支援も治療の選択肢の一つです。

入院治療は症状が重篤な場合に必要となることもあります。デイケアは通院しながら日中のリハビリや社会参加プログラムに参加できるサービスです。リハビリテーションでは、社会生活に必要な能力の回復や維持を目指します。

これらの治療法を組み合わせることで、症状のコントロールや社会復帰を促進ができます。

長期就労を実現するための実践的な管理方法

この章では、統合失調症の症状と上手に付き合いながら長期的な就労を実現するための実践的な管理方法を3つのポイントに絞って解説します。

これらの方法を実践すると仕事と治療の両立の助けになるでしょう。

服薬・通院と仕事スケジュールの両立を目指そう

統合失調症の治療において、服薬と定期的な通院は重要です。しかしながら仕事と両立させるためには工夫が必要となるでしょう。

まず通院スケジュールを事前に把握し、仕事に支障がないように調整しましょう。 休暇取得のルールを理解し、必要に応じて休暇を取得できるようにしておきましょう。また薬の服用時間と仕事のスケジュールを調整できれば、仕事の効率性を維持しつつ治療の継続につながります。

薬の副作用に注意し、必要に応じて医師に相談しましょう。副作用によっては仕事の効率性を下げる可能性があります。

症状の前兆を早期発見し対処する

統合失調症の症状には、悪化の前に現れる前兆があります。 これらの前兆を早期に発見し、適切に対処することで症状の悪化を防げます。 

前兆としては睡眠障害や集中力の低下、イライラしやすくなる、社会的な活動への意欲の低下などが挙げられます。前兆を感じ始めたらすぐに休息を取り、症状の悪化を防ぐための行動をとりましょう。

必要に応じて主治医に相談し、適切な対応策を検討しましょう。
日頃から自分の体調や精神状態に気を配り、記録をつけておくと前兆の早期発見に役立ちます。

長期就労に向けた職場選びのポイント

統合失調症を抱えながら働くうえで、職場環境を事前によく考えてみましょう。障害をクローズにするかオープンにするかを含め、自分に適した働き方の選択が重要です。

障害者雇用制度の活用も選択肢の一つとして検討してみましょう。

法的な配慮を受けながら働くことで、通院時間の確保や業務量の調整などが相談しやすくなります。また特例子会社の選択肢もあります。障害への理解が深く症状に配慮した環境で働けるため、安心して長期的な就労を目指せます。

オープン就労では職場に症状を説明し、必要な配慮を求められます。
無理をして症状を隠す必要がないため、精神的な負担を軽減できます。

まとめ

この記事では統合失調症と仕事の両立、陽性・陰性・認知症状の理解から診断・治療、そして具体的な就労支援まで幅広く解説しました。

症状の現れ方には個人差があることを理解し、早期発見・早期治療を心がけましょう。

大切なのは自身の状態を正しく理解し、服薬・通院を継続しながら無理のない範囲で仕事に取り組むこと、そして周囲の理解と助けを得ながら障害者雇用制度の活用も含め、自分に合った働き方を見つけることでしょう。

この記事が統合失調症と仕事に悩む方々にとって、新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

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